これから医療・介護を目指す方へ ~ICF(国際生活機能分類)について~

2020.07.21掲載
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お役立ち情報

これから医療や介護業界を目指す方々へ、基本的な介護の理解度を深めるお役立ち情報をご紹介させていただきます。
今回は、介護福祉士国家試験でも出題されております「ICFInternational Classification Functioning,Disavility and Health)」国際生活機能分類についてご紹介したいと思います。

ICF(国際生活機能分類)とは?


ICFと言っても、医療や介護の業界に携わっておられない方々には馴染みの薄いフレーズであると思います。
しかし、2001年にWHO(世界保健機関)の総会で人間の生活機能と障害の分類法として採択されており、2002年に日本語公定訳が発行されました。
これまでは、WHO国際障害分類(ICIDH)が身体機能の障害による生活機能の障害等、マイナス面いわゆる社会的不利を分類するという考え方が中心であったものに対し、ICFは生活機能というプラス面からみるように視点を転換し、さらに背景因子(環境因子・個人因子)の観点を加えたことと言われております。
ICFの目的を一言で表現すると「人が生きることの全体像」を示す共通言語となり、その全体像を「生活機能モデル」としてそれぞれの専門分野や異なる立場の方々に対し、相互理解に役立つことが目的の一つとなっております。
難しいですね。。。
一つ例とするならば。。
介護老人保健施設に入所中のYさんが、来月退所予定とします。
現在、施設では退所に向け、在宅での生活を想定し、歩行訓練のためのリハビリを行っております。
在宅復帰後は、訪問リハビリに切り替え、継続した歩行訓練が必要な場合、利用者の既往歴・健康状態・リハビリのアウトカム評価・自宅の間取り・利用者家族の支援状況等、利用者の様々な情報が訪問リハビリスタッフと共有することが必要となります。
もしくは、歩行訓練中は外出できなくとも、車いすを利用し外出を促すことも課題解決の一つともなります。
ICFはそのような情報の分類方法やまとめ方をテンプレートにするといったイメージとなります。
こちらの例えをまとめると、障害により歩行訓練が必要であり、外出を諦めるのではなく、車いすを利用することにより、「外出できる」と捉えれば、「できない」「できる」に変わります。
このように「人が生きることの全体像」を捉えて、「よりよく生活するために何が必要か?」を考える生活機能と障害の分類法を「ICF(国際生活機能分類)」と言います。

ICFの「生活機能」とは?

ICFでは、生活機能を「人が生きることの全体像」を示すものとし、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つに分類しております。

上図の構成要素を結ぶ双方向の矢印は、相互作用していることを示すモデルとなります。
生活機能である「心身機能・身体構造」「活動」「参加」はそれぞれ密接な関係性を保ち、「健康状態」と「背景因子(環境因子・個人因子)」とも相互依存の関係性となります。
この関係性で重要なのが「矢印がそれぞれの要素に向いている」ということです。
わかりやすく説明すると、健康状態は心身機能・身体構造に影響を与え、心身機能・身体構造は健康状態に影響を与える関係性と言えます。

ICFの各項目の説明について

①健康状態

健康状態とは、外傷、疾患、ストレス、妊娠、加齢その他様々な健康に関する状態を示す広義の概念となります。

②心身機能・身体構造

心身機能とは、呼吸をする、排尿・排泄、栄養を摂取する等生理的機能と、思考すること、喜怒哀楽の感情、視覚・聴覚・味覚・嗅覚等感覚、いわゆる心理的機能のことを指します。
また、身体構造等は、骨格・筋肉・脳・臓器・血管・皮膚等、人の解剖学的な視点で見た体の構造を指します。

③活動

活動とは、いわゆる社会生活上必要な行動となり、買い物・旅行・家事・仕事等、日常生活を送るうえで具体的な行動を指します。

④参加

参加とは、生活や人生で他者との関わりや社会との繋がりで役割を果たすことを指します。家庭への参加・学校の授業への参加・職場で働く、スポーツへの参加等、広義の参加活動が含まれます。

⑤環境因子

環境因子とは、主に3つの環境に区分けされており、<物的環境>道路の構造、建物構造、交通機関、車いす等の福祉用具等<人的環境>家族、教師、友人、周囲の障害者に対する意識等<社会制度的環境>自立支援法などの法律、教育、医療や介護のサービス等、周囲を取り巻く<物的環境><人的環境><社会制度的環境>の3つの環境により環境因子が構成されております。

⑥個人因子

個人因子とは、その人固有の特徴を指し、年齢・性別・民族・生活歴・価値観・ライフスタイル・興味関心等を指します。

YさんをICFの視点で見てみましょう

先ほど、施設入所中と仮定したYさんの全体像をICFの考え方に沿って、改めて全体像を深掘りしてみます。

健康状態

・脳梗塞後の後遺症による右片麻痺

心身機能・身体構造

・右半身筋力低下
・変形性膝関節症

活動

・施設内では歩行器と手すりを利用し移動。外出時は施設スタッフの補助を受けながら基本的には車いすで移動。
・排泄は、日中施設スタッフの補助を受けトイレを使用、夜間帯は居室内のポータブルを使用中。
・入浴は施設内の個浴を利用し、スタッフの補助を受けながらの入浴。

参加

・施設内でのリハビリ(歩行訓練、上肢体操等)
・施設内でのレクリエーション参加

環境因子

・自宅一戸建て住宅に夫が居住。三男夫婦は同じ市内で生活。長男・次男は別の県で生活。
・自宅は施設退所を想定し、バリアフリー化工事済。
・夫は、訪問介護による生活援助サービスの支援中。

個人因子

・78歳女性。要介護3
・北海道出身。戦後京都に移住し結婚。金融機関勤務を経て夫と結婚。三人の息子。
・Yさん自身5人兄弟の長女。幼少期より家庭で食事担当。グルメ旅行好き。孫の写真担当。
・子育てが終わってからは、夫との日帰りグルメ旅行が週末の楽しみ。孫に会いに行き撮影も楽しむ。

ICFに沿って、Yさんの状況が把握できたのではないでしょうか?
この情報を基に、施設から退所後のリハビリ計画を組み立てることが重要となります。
Yさんのキーワードとして、「グルメ」「旅行」「写真撮影」「孫」にアプローチすることにより、本人のリハビリ意欲を高めるよう「お孫さんに会いに行き、美味しいものを食べる」ことを目標設定し、本人の意欲や意識を高めることに繋がることになります。
また、福祉用具(杖・シルバーカー・車いす等)を活用することで、目標達成に近づくことにも繋がってくると思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
ICF(国際生活機能分類)と、聞きなれないワードのご紹介ではありましたが、過去の介護福祉士国家試験でも出題されたテーマとなっております。
普段、「人が生きることの全体像」を考えながら生活することは少ないと思いますが、ICFによって本人をはじめその家族が、医療や介護・福祉制度のもと各専門分野の方々が、生活機能や健康状態を本人のバックボーンを踏まえたうえで、情報共有することにより、様々な医療や介護のサービスでアプローチすることにより、本人のリハビリに対する目的や目標設定にも繋がってくると思います。
もちろん、ICFの型にはめるだけでなく、本人が「より良い生活を送るために」が一番の課題となりますので、その前提条件を忘れず、サービスを計画し、都度評価し記録することが現場で必要となります。

今回は、医療や介護業界を目指す方に向け、現場ではICFという国際的な生活機能と障害の分類法を用いてサービス提供していることをお伝えさせていただきました。
コロナ禍の影響により、Gotoトラベルも先行き不安な状態ではありますが、医療や介護の現場は止まることなく、活動されております。

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