介護職員等特定処遇改善加算とは? ~介護用語のご紹介~
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
来週にはオリンピックが開催されるというのに、全く実感がないのではないでしょうか?
国内ではプロ野球、Jリーグ、高校野球等、普通に有観客の映像をみて、海外ではMLBのオールスターや、サッカーのEURO等は、マスク無しで且つ大声で歓声をあげての応援。
とは言っても、インドネシアやタイ等、特に東南アジアでの変異株大流行のニュースを見て、日本でも同じような状況になる可能性も否めず、何が正解なのか?全く判断付かない状況ではないでしょうか?
オリンピックは、開催されるということですので、Before・Afterでどのような状況となるか?
しっかり見極める必要がありそうですね。
ただし、開催されるからには、選手には頑張っていただきたいものです!
さて、前回介護処遇改善加算についてお伝えさせていただきました♪
今回は、その上位区分となる介護職員等特定処遇改善加算についてご紹介したいと思います!
目次
介護職員等特定処遇改善加算とは?
この介護職員等特定処遇改善加算とは?
前回のお役立ち情報でご紹介させていただきました、介護職員処遇改善加算に加え、一定の経験や技能いわゆるキャリア(介護福祉士経験10年以上等)のある介護職員に対し、更なる処遇改善を行う加算となります。
今回は、様々な加算要件や当初から制度化されておりました処遇改善加算に加え、更なる処遇改善が必要な背景等についてご紹介したいと思います!
介護職員等特定処遇改善加算制度化の背景について
厚労省では、第7期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、今後の介護人材の需要を予想し、2020年度末には約216万人。
2025年度末には約245万人が必要と試算しております。
これは、2016年度約190万人の介護人材数から、2020年度末には約26万人、2025年度末には約55万人の増員が必要になると推計されております。
よって、2025年度末には、毎年約6万人程度の介護人材の確保が必要であると2016年に試算されました。
今後も、益々少子高齢化が顕著になることは、周知のとおりと思います。
そこで、国としては、①介護職員の処遇改善 ②多様な人材の確保・育成 ③離職防止・定着促進・生産性向上 ④介護職の魅力向上 ⑤外国人材の受入環境整備など総合的な介護人材確保に向けた対策が講じられております。
このように、将来的な介護需要に備え、介護人材確保が急務である状況の中、介護人材の賃金の状況からすると、全産業では平均年齢41.8歳、平均勤続年数10.7年、賞与込みの給与が36.6万円に対し、介護職員は平均年齢41.3歳、平均勤続年数6.4年、賞与込み給与が27.4万円と、勤続年数が短く、賞与込み給与も低い水準であることが裏付けられております。
※厚生労働省「平成29年賃金構造基本統計調査」より
国も2017年度予算において、介護職員について経験などに応じて昇給する仕組みを作り、月額平均1万円そうとうの処遇改善を行うなど、月額4.7万円の改善が行われてきましたが、前記する将来的な需要と供給の均衡を保つ必要性が生じており、介護人材確保のための取組みをより一層進めることになっております。
介護職員等特定処遇改善加算で重視される視点
この介護職員等特定処遇改善加算を制度化するにあたり、以下のような視点が重視されております。
①介護職員の更なる処遇改善
・介護離職ゼロに向け、最大の課題は介護人材の確保。処遇改善を更に進めることが必要
②経験・技能のある職員に重点化
・介護職員の平均勤続年数は、全産業や多職種と比較して短い
・介護職員の賃金は全産業は多職種と比較して低い
・介護のケアの質の向上を図る観点からも、介護現場への定着促進につなげる必要
③柔軟な運用を認めること
・①、②の趣旨を損なわない程度で、介護以外の職種に配分可能とし、介護事業所の賃金のベースアップ等につなげる必要
上記の視点で、介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に公費が投じられております。
実施時期は消費税増税と同時期となる2019年10月からとなりました。
介護職員等特定処遇改善加算の算定要件について
この介護職員等特定処遇改善加算を算定するにあたり、以下の5つのチェックポイントの精査が必要となります。
①特定加算の算定要件の確認
②加算区分の確認
③特定加算の見込み額の計算
④賃上げを行う単位の決定
⑤賃上げルールの決定
では、ひとつずつご紹介していきます!
1.特定加算の算定要件の確認
■要件1
現行の介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを算定していること
前回お役立ち情報にて現行の介護職員改善加算についてご紹介しておりますので、こちらをご覧いただき確認していただければと思います!
■要件2
介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組みを行っていること
職場環境等要件は、以下の3つの取組みからなります。
1)資質の向上
2)労働環境・処遇の改善
3)その他
以下に要件例を記載させていただきます。
1)資質の向上
・ 働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援
・より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対 する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援(研修受講時の他の介護 職員の負担を軽減するための代替職員確保を含む)
・ 研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
・ 小規模事業者の共同による採用
・人事ローテーション
・研修のための制度構築
・ キャリアパス要件に該当する事項(キャリアパス要件を満たしていない介護事業者に限る)
2)労働環境・処遇の改善
・ 新人介護職員の早期離職防止のためのエルダー、メンター(新人指導担当者)制度等導入
・ 雇用管理改善のための管理者の労働・安全衛生法規、休暇・休職制度に係る研修受講等による雇用管理改善対策の充実
・ ICT活用(ケア内容や申し送り事項の共有(事業所内に加えタブレット端末を活用し訪問先でアクセスを可能にすること等 を含む)による介護職員の事務負担軽減、個々の利用者へのサービス履歴・訪問介護員の出勤情報管理によるサービス提供責任 者のシフト管理に係る事務負担軽減、利用者情報蓄積による利用者個々の特性に応じたサービス提供等)による業務省力化
・ 介護職員の腰痛対策を含む負担軽減のための介護ロボットやリフト等の介護機器等導入
・ 子育てとの両立を目指す者のための育児休業制度等の充実、事業所内保育施設の整備
・ ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の 改善
・ 事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成による責任の所在の明確化
・ 健康診断・こころの健康等の健康管理面の強化、職員休憩室・分煙スペース等の整備
3)その他
・ 介護サービス情報公表制度の活用による経営・人材育成理念の見える化
・ 中途採用者(他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等)に特化した人事制度の確立(勤務シフトの配慮、短時間正規職員 制度の導入等))
・ 障害を有する者でも働きやすい職場環境構築や勤務シフト配慮
・ 地域の児童・生徒や住民との交流による地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上
・ 非正規職員から正規職員への転換 ・ 職員の増員による業務負担の軽減
■要件3
介護職員処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた「見える化」を行っていること(2020年度から算定要件化)
尚、介護サービス情報公表制度を活用し公表しても可とされております。
上記の3つの要件を満たすことができれば、勤続10年以上の介護福祉士がおられなくても算定可能となっております。
2.加算区分の確認
この特定加算の加算区分は、ⅠとⅡの2つの区分となります。
Ⅰは、現行のサービス提供体制強化加算の最も上位区分を算定している場合、算定可となります。
訪問介護では、特定事業所加算ⅠまたはⅡ
特定施設では、サービス提供体制強化加算または入居継続支援加算
特別養護老人ホームでは、サービス提供体制強化加算または日常生活継続支援加算
Ⅰに該当しない場合、特定加算のⅡが算定可能となります。
3.特定加算の見込み額の計算
では、特定加算の見込み額の計算方法についてご紹介させていただきます。
前記する「2.加算区分の確認」にて、サービス提供体制強化加算の算定状況により特定加算のⅠもしくはⅡに分類されることになります。
そこで、特定加算(Ⅰ)もしくは特定加算(Ⅱ)に対応する加算率が規定されております。
上図は、加算算定対象サービスごとの特定加算(Ⅰ)および(Ⅱ)の加算率となっております。
各サービスごとの介護報酬にこの対象加算率を乗じた数値が、各事業所に特定加算として支払わる仕組みとなります。
介護サービスの中で、訪問介護/夜間対応型訪問介護/定期巡回・随時対応型訪問介護看護この3つの介護サービスの加算率が一番高い率となっております。
このように、成り手不足もしくは、これから介護人材確保が必要なサービスには加算率が高設定されております。
4.賃上げを行う単位の決定
介護職員等特定処遇改善加算を算定するにあたり、同じ賃上げルールのもと賃上げを行う単位を、法人もしくは事業所ごといずれかを決定する必要があります。
例えば、法人が4事業所分を一括して申請する場合
①経験・技能のある介護職員における「月額8万円」の改善または「役職者を除く全産業平均水準(年収440万円)」の設定・確保
→法人内で各事業所1人分として、合計4名の設定・確保が必要
②法人の職員全体で
1)経験・技能のある介護職員
2)その他の介護職員
3)その他の職種を設定し、処遇改善額を設定
上記のように、事業所ごとか法人全体を単位として取り扱うか?の選択が必要となります。
5.賃上げルールの決定
賃上げには以下のようなルールを決定することが必要となります。
①賃上げを行う職員の範囲を決定します。
1.経験・技能のある介護職員を定義したうえで、全ての職員を以下のA~Cにグループ分けし、職員の範囲を決定します。
A:経験・技能のある介護職員
B:その他の介護職員
C:介護職員以外の職員
加算額を全てAに配分することも可能ですし、BやCに配分することも可能です。
2.どの職員範囲で配分するか?決定する。
すべての職員をA、B、Cに分ける
この賃上げを行う職員範囲については、事業所内で検討し設定することが重要です。
Aは介護福祉士の資格をもつ人がいない場合や、比較的新しい事業所で研修・実務経験の蓄積等に一定期間を有するなど、介護職員間における経験・技能に明らかな差が無いばあいにまで設定を求めるものではありません。
Aでは介護福祉士の資格を求められますが、10年より短い勤続年数でも可能です。他の法人での経験もカウント可能となります。
②賃上げ額と方法を決定します
基本は、A:経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、月額8万円の賃上げ及び年収440万円までの賃金増が必要という定義がございます。
1.月額8万円の賃上げ
・ 賃金改善実施期間における平均賃上げ額が月額8万円となる必要
・ 現行の介護職員処遇改善の賃金改善分とは別に判断する
・ 法定福利費等の増加分を含めて判断可能。
2.賃上げ年収440万円までの賃金引上げ
・ 440万円を判断するに当たっては、手当等を含めて判断することが可能。
・ 賃金年額440万円が原則。年度途中から加算を算定している場合、12ヶ月間加算を算定していれば、年収440万円 以上と見込まれる場合について、要件を満たすものとして差し支えない。
・ 現に年収440万円の者がいる場合はこの限りでない。
・ 社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含まずに判断。
3.例外的な取り扱い
・ 以下の場合などは、月額8万円の賃上げ又は年収440万円までの賃金増の条件を満たさなくてもよい。
▶小規模事業所で加算額全体が少額である場合
▶職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合
▶8万円等の賃金改善を行うに当たり、これまで以上に事業所内の階層、役職やそのための能力・処遇を明確化する ことが必要になるため、規程の整備や研修・実務経験の蓄積などに、一定期間を要する場合
③賃上げ額と方法を決定します
A、B、Cそれぞれのグループの平均賃上げ額について「AはBの2倍以上」「CはBの2分の1以下」にする必要があります。
以下の、図を見ていただく方が、わかりやすいと思います。
恐らく、各事業所ごとに様々なルールを策定し、届出担当の方は、煩雑ではありますが、介護職員の人材確保を行うためには必要な業務になると思います。
介護領域における求職者の方にとって、介護福祉士の方であれば、このような取組を行う施設を選択するにあたってのひとつの指標ともなりうるものと思われます。
これから介護福祉士を目指すかたにとっては、このような制度がある以上、ご自身の知見・経験が給与に転嫁されるシステムでもありますので、資格取得に向けて励みにもなると思います。
このように、介護職員人材確保に向け、国も様々な施策を打ち出しております。
今回のコロナ禍においては、医療や介護の領域がエッセンシャルワーカーとしてクローズアップされました。
恐らく、今後も労働人口が減少し、高齢者数が増加の一途を辿ることは周知の事実ですので、医療や介護の領域は安定した職場であることの裏返しとも言えるのではないでしょうか?
求職者の方々には、このような取組の有無について、求職活動の選択肢のひとつとすることになるかも?しれませんね。
いかがでしたでしょうか?
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次回も介護にまつわるお役立ち情報をお届けしたいと思います。
では、良い週末を!!